ドロドロ劇が喜劇に昇華されるとき〜ハウス・オブ・グッチ~House of GUCCI
『週刊朝日』という雑誌に「私の裏切り裏切られ史」という連載があった。80年代に書籍化されたエッセイで、著者は花登筺(はなと・こばこ)という喜劇の脚本家だった。
作家生活における色んな人間関係を描きつつ、ドロドロした内幕をサラサラと軽い筆致で明るく楽しく描写しているところが何とも面白く、毎週読みつつ本になったときには速攻で買った。
今回見たこの映画「ハウス・オブ・グッチ」(House of GUCCI)まあ何というかここまで名門ブランドの黒歴史を暴いちゃっていいのというぐらいグリグリとエグいところが描かれており。
昨今の映画にしては長尺の作品で、実をいうと頭の30分ぐらいが退屈でついウトウトしてしまい。
名門の御曹司が運送屋の娘と結婚、親の反対を押し切って幸せに、、、みたいなステレオタイプの展開につい食傷気味になってしまったのが主因w
また、イタリアの人たちが吹き替えでもなく皆英語で話していたことに少しく違和感があり(ま、米国映画ですよってw)。
しかし。
レディガガ扮するそのヨメが曲者、ドロドロとした欲望を隠しつつも確実に名門の家に食い込んで行くプロセスに入ると俄然面白くなり、そこからラストまでは食い入るようにスクリーンを見ておりました。
レディガガのみならず、とにかく登場人物一人一人が強烈な個性を持っており(いわゆるcharacters)、クセのある言動がギラギラと魅力的なのでありました。
名門ファミリー内におけるパワーゲーム、色んな駆け引きは、花登筺が描いていた世界を百倍ぐらいエグくした感じなのだけれども、実はドロドロすればするほど、エグくなれぼエグくなるほど喜劇に見えて来たわけで。0
「ハウス・オブ・グッチ」自体は全く喜劇仕立てにはなっていない、というか十二分にシリアスな仕立てになっているのに、喜劇に見えてしまうのは何故なんだろうと。
そんなことを考えていたときふと思い出したのが「私の裏切り裏切られ史」だったわけです。
アクの強い作品ながら何とも素敵な映画でありました。