されどロックな日々 - ANNEX

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2011年 映画 ベスト10 ワースト3

キネマ旬報が2011年のトップ10などを発表した。
1位に『一枚のハガキ』が来るあたり、選者皆様がどのような方々なのかが良く分かって興味深いところ。
しかし『冷たい熱帯魚』『モテキ』が入っているあたりは、なかなか渋いというか、ツボを押さえているという感じではある。

ワタシも昨年のトップ10とワースト3を考えてみた。


<トップ10>

1.婚前特急
2.監督失格
3.冷たい熱帯魚
4.終わってる
5.モテキ

6.劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴りやまないっ!
7.密告者とその家族("The Collaborator and His Family")
8.エマニエル 2011
9.イチジクコバチ
10.ダンシングチャップリン


<ワースト3>

1.もしドラ
2.ウォールストリート
3.ステキな金縛り


以下、トップ10に関して……:


婚前特急
ラストがお約束的ハッピーエンドだったのがちょっと気になったが、構成、キャラクター、設定、セリフなど、とにかくさりげなくもしっかり作りこまれ凝っていて引き込まれました。
特に最初のシーン、セリフ無しながら実に上手い導入。
全体としては、吉高由里子が良かったのはもちろんだが、ハマケンこと浜野謙太や石橋杏奈加瀬亮も非常に魅力的なキャラになっていた。
TAMA CINEMA FORUM において、ケータイサイトなどで公開された、婚前特急にかかる一連の作品を一気に見たが、これまた非常に面白い作品群ではあった。
これからが楽しみな監督。


監督失格
本作品がらみでは、公開直前のポレポレ東中野でのオールナイトイヴェントである北海道自転車3部作鑑賞から、某映画学校における平野監督&カンパニー松尾監督の対談など、いろいろ参加してみた。
林由美香を好きな人が撮った作品であるがゆえ、もちろん林由美香の魅力が存分に描き込まれている。
個人的に気に入っているシーンは、北海道に出発直前の壮行会で、林由美香カンパニー松尾氏が丁々発止のやり取りをし、その間に文字通り物理的に挟み込まれて座っている平野監督がどう絡めば良いのかと逡巡している(?)ところw あそこは面白い。
林由美香のキャラクターが垣間見えて興味深いというか、なぜ多くの映像作家たちが林由美香に惹きつけられるのかが何となくわかるシーン。
今年の3月にはポレポレ東中野でやるそうだから、また見に行きそうなイキフンw


冷たい熱帯魚
これはストーリー運びもさることながら、とにかくキャラクター造形が素晴らしい作品。
吹越満、でんでん、黒沢あすか、渡辺哲らの好演、怪演によってぐいぐいと引き込まれた。
特にでんでんと黒沢あすかカップルには痺れた。
イイ人から徐々に悪人へ変わって行くプロセスが不気味ながらも魅力的に描かれていたというか。
キメのセリフ「人生は痛いんだよ」にはハマったなあ。


『終わってる』
青春Hシリーズの一作。
卓球のシーン、死んだ旧友の幽霊が出て来るあたりにちょっと違和感ありながら、音楽がほとんどなく、またストーリーが淡々と進み、場面の描写で見せる感じが渋くカッコ良い。
セリフはかなり削られているという印象だったが、その分をしっかり描写でカバーしているというか。
終わってるというタイトルが出て来るタイミングが絶妙。
劇中では女優魂炸裂で素晴らしい演技を見せていたしじみ嬢が、舞台挨拶ではルーズな感じのファッションに身を包み、いかにもマイペースなキャラを出していたのが面白かった。


モテキ
ビルや道路に字が流れたり、カラオケの歌詞が画面に現れたり、いかにもテレビっぽい作りだったが、それらが映画としての魅力を損なうようなことはまったくなく、最初から最後まで一気に見せられたという感じ。
後半で、ちょっとストーリー展開のスピードがダウンするものの、全体を通して女優陣の頑張りは素晴らしかった。
特に麻生久美子の演技がアタマ一つ抜けてる感じ(ただし、人妻でしかもオメデタということで、個人的にはガックシ落ちたw)。
モテ記という本も買って、裏話的なネタを仕入れたので、DVDでまたじっくり見てみたい。


『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴りやまないっ!』
ちょっとした群像劇で、各人・各グループがラストのライブシーンに向かって収斂して行く作り方は上手いなあと感心させられることしきり。
見ている途中、これ一体どうやって回収するんだろうみたいな気分にもなったが、最終的に上手くきちんとまとまっていてマル。
バンドの各メンバーの魅力もさることながら、マネジャー劔樹人さんの葛藤する姿が面白く、この作品のひとつのキーになっている。
あの人自身もミュージシャンってことを、この作品を見た後で知った。
ステージで喧嘩したとか(?)、色々話題豊富なバンドだけど、これからも要注目であることは間違いないでしょう。


『密告者とその家族』
怖くて哀しいドキュメンタリー映画。山形の国際ドキュメンタリー映画祭で見た。
インターナショナル・コンペティション部門で大賞を獲ったとのことだが、さもありなんと実にうなずける作品。
イスラエルのスパイとして働いていたパレスチナ人の父親が、結局イスラエルからは捨てられ、もちろんパレスチナからは裏切り者扱いとして追われるサマを描いた作品。
どうでも良いようなことで逮捕される息子たちや何とも恵まれない生活を送る娘たち……。
国際政治に翻弄される一家が何とも生々しく描かれていた。


『エマニエル 2011』
俊英、荒木太郎監督による作品。
荒木監督の作品では『濹東綺譚』や『夢しか夢がない人のプロレタリア恋愛』なども好きで、後者など青空に向かって“ローレライ”を歌うという所作があり、氏の牧歌的かつ抒情的な作風(?)が非常にツボにはまったものだ。本作しかり。
俳優の足だけを映すシーンにセリフを絡ませるというやり方は、『お葬式』や『時をかける少女2010』などでも見たことあるが、本作においてもなかなか効果的に使われている。
音楽も良く、ピアノがバックに流れている男のボーカルが渋かった。


『イチジクコバチ
物語の進行がどうのというよりも、とにかく場面場面の描写が良かった。
特に主人公が一人でメシを食うシーンとか、その他もろもろ、全体的に静かな進行ながら、淡々と進む独特の世界あり。
基本的に暗い映画なるも、登場人物たちは皆魅力的。
主演の水井真希という女優だが、このヒト文才もかなりあるようで、色々な形で発表している文章群が珠玉。
“月刊水井”というフリーペーパー最新号では、自分の考えたことを文章にすることが、自分にとってどういう意味を持つかについて、自分の言葉でしっかり綴っている。
その類の文章には、学生時代に2回ほどお目にかかったことがある。
著者は確か政治家と学者だったように記憶するが、水井真希はそのオッサンたち二人に負けない内容を、きちんと自分の言葉で書いている。
他の文章を読んでも、目の付けどころとか独自の視点を持っているし、将来は小説などで才能を発揮するのではないかと予感させられる。
そういえば舞台挨拶でもなかなか光るコメントを発していた記憶あり、要注目の女優である。
青春Hシリーズの一作。


『ダンシングチャップリン
周防監督が奥さんである草刈民代にフォーカスを当てて撮った感じの作品。
見ているほうがちょっと照れる感じw
前半はドキュメンタリーで、後半はチャップリンの映画にちなんだ、ショートストーリーをモチーフとしたバレエ作品。
バレエのことなどまったくわからないが、やはり草刈がしっかりと魅力的に描かれていて二重マル。
ワタシ的には前半のドキュメンタリーのほうがドラマがあって面白かった。
プティというバレエ監督とのコンフリクトなど、なかなかの見せ場である。
ダンスの相方とコンビネーションが上手く行かないシーンがあったりとか。
後半はストーリーよりも、やはりバレエを見せるところがメインとなる。
草刈の知性と運動能力はすごい。何より迫力がある。



以下、ワースト3に関して……:

まあ、ワーストというよりも、こちらの期待値が高かった分、残念だった作品というほうが良いかもしれない。


『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの“マネジメント”を読んだら』(略称:もしドラ
ビジネス+野球+女子高生という、実にユニークなハイブリッドで話題となった本だったので、映画ではビジネスをエンタメにした手腕を見たかったのだが、期待外れであった。
というか、もうチープというか安っぽいというか、便所退避者や途中退場者が出たのもうなずける。
ワタシも途中で逃げ出そうと思ったが、一緒に行ったヤツがぐーぐー寝てて起きなかったしw、“あの”秋元康氏が絡んでいる作品ならば、つまらないわけがない、いずれ終盤に向けて面白くなるのだと自分に言い聞かせつつ最後まで粘ったが、結局ダメであった。やっぱつまんね。
野球のシーンとかド下手だし、ストーリー自体が超露骨なまでの予定的調和的展開。
チープなカンドーの押しつけ。
気持ち悪かった……。
あれを作品として発表すること、本当に秋元さんは承認したのだろうか……という疑問が残った。


『ウォールストリート』
80年代に作られたオリジナル(?)は非常に好きで、DVDなど何回見たか思い出せないほどである。
過去10年間、年に3〜4回は見ていたから、トータルで40回近くは見ている計算になる。
しかし、2011年ヴァージョンの本作は駄作。
オリジナルではギラギラしててカッコ良かったマイケル・ダグラスだったが、今回は人物的に魅力のあるキャラは皆無、絶無。
物語の運びとしては、ロンドンでゴードン・ゲッコーがカムバックするという流れは良かったかな。
娘の妊娠がどうのとか、ハートウォーミングなwホームドラマ的要素が絡んだのは、とにかくヤな感じ。焦点がブレてる。キモい。
あと、バイクのバトルシーンが笑えた。単純な話、二人とも異様に下手。
あれなら奥多摩の周遊道路で遊んでるライダーたちのほうが、よっぽど上手いと思うなあ。


『ステキな金縛り』
三谷作品や深津サンは好きなんだが、本作はいただけない。
ダンドリ芝居の典型……みたいな。
俳優陣の顔ぶれや、絨毯爆撃的な集中的宣伝を見るに、カネはかな〜りかかっているようだが、仕上がりを見るに、何とも残念な作品であった。
例えば、青春Hシリーズの作品にはカネはかかってないが、実に面白い作品がある。
カネはなくともアタマを使えば面白い作品はできるってことで。
しかしその逆もまたしかり。
本作はそれを実証してしまった感じ。
三谷さんの次回作、大いに期待であります。