されどロックな日々 - ANNEX

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MSPピックアップ・レヴュー

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2016年の11月中旬。
アコースティック楽器用のコンタクト型ピックアップを購入してみた。
その名を「MSP ピックアップ」という。

メーカーは、愛知県犬山市にある「123MUSIC.JP」だ。
MSPとは、“Magnet Sandwitched Pickup”の略であり、ピックアップを内蔵していないタイプのアコースティック楽器でも、特に改造の必要もなく、磁石でピックアップを固定できるという、なかなかにユニークな製品である。

2016年から17年にかけての年末年始には色々なライヴやイベントに参加したのだが、このMSP、非常に良い仕事をしてくれた。ちなみに、購入以来、これまでに9カ所、9回のライヴで使用している(17年1月時点)。
会場の内訳は、キャパ20人程度のアットホームなライブハウスから、80人の中規模ライブハウス、またキャパ200人の小規模ホールまでである。

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色々と特筆すべき点はあるが、以下、いくつかポイントを列挙してみる。

1)音質が良い。
貼り付け型のピックアップには、えてして音がこもりがちになるという宿命がある。
しかるに、MSPにはこれが当てはまらない。ブリッジ下に埋め込むタイプのピックアップや、グースネックの先に付いたコンデンサーマイクでボディ内の音を拾うタイプのピックアップにまったく引けを取らない、クリアでエッジの効いたサウンドが得られる。単音、和音ともに、音の輪郭がしっかり出るのである。

2)楽器を傷つけない
強力なマグネットで楽器に装着する仕様になっているため、楽器に加工がまったく不要である。ヴィンテージ楽器にも何ら躊躇うこともなく装着することができる。

3)サウンドバリュエーションがきわめて豊富である。
取り付ける、つまりは貼り付ける場所によって、色々なサウンドバリュエーションが楽しめる。これは面白い。
基本的にはブリッジ近辺の表板に配置するのがオーソドックスなアプローチだろうが、敢えてネック寄りの表板に付けてみたり、サウンドホールの真下に付けて見たり、はたまたボディサイドに付けてみたりと色々試してみるのも面白い。驚くことに、かなり音質が変化するのである。
また、ピックアップ本体をそのままウクレレやギターに張り付けても良いが、付属のフェルトでできた緩衝材をはさんでみると、音が実にまろやかになる。オシロスコープなどで波形を見たなら、恐らく角がずいぶんと丸くなっているものと思われる。

4)プリアンプを使うと、より効果的
キャパが30人程度ぐらいまでのハコなら、特にプリアンプを使わずとも何とかなった。つまり、あまり神経質にならない限り、PAやアンプでそれなりに自分の好みの音が出せるし、そのコントロールも手軽にできるケースがほとんど。
しかし、50人以上が入るライブハウスやホールの場合には、PAのオペレーターさんも遠いところに座っていたりするし、細かいニュアンスなどが出しにくくなることもあり、そうなるとやはり手元でしっかりと音をコントロールできるような環境が欲しい。
最も手っ取り早いのは、プリアンプを使うことであろう。
僕の場合、ウクレレには L.R. Baggs の GigPro を愛用している。これはベルトクリップで腰の後ろ側にセットすることができるので、色々と動き回ることもあるライヴでは非常にありがたい。
コントロール類としては、27Hz-200Hz の可変トリム、トレブル、ベース、ゲイントリム、位相スイッチなどを、その小さな本体に擁する。
このプリアンプ、実に小さく手軽なのであるが、その機能はなかなか優秀、またMSPとの相性も抜群で、大きめのハコには非常に有用である。
ちなみに、アコギを弾くときには、定番のアイテム Para Acoustic D.I. を使用している。

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5)エフェクターとの相性が良い。
音作り、サウンドコントロールという点からすると、アコースティック専用なら、例えば Zoom の A3 あたりが妥当か。
僕の場合、LINE6 の POD や BOSS の ME-25 をかましてみたのだが、歪み系から空間系、はたまたモジュレーション系、ダイナミクス系からフィルター系に至るまで、しっかりと音が変化し、様々なサウンドヴァリエーションを楽しめた。MSPは各種エフェクターとの相性もなかなか良いという印象。

6)ハウリングに強い。
これまで9回のライブにおいて、ハウリングに悩まされたことは1回もなかった。
ライヴの現場において、これは実にありがたいことである。
今まで、様々なアコースティック系のピックアップを使ってみて、何気に大いに悩まされたのがハウリングであった。事前にボリュームやEQでしっかり調整してあっても、ちょっとしたことで「ブゥ~ン」やら「キィ~ン」やらというあの音が聞こえてくることがままある。
ライヴの現場というのは忙しい。ごった返していると言っても良い。
演奏中、ちょっとモニターなどに近づいただけでいきなりハウったりされると、その調整でなかなかに面倒だったりするし、場合によってはオーディエンスに不快感を与えてしまうことだってある。
最近ではプリアンプやエフェクターハウリングを解消、相殺する機能が付いているものもあるが、そのようなファンクションを使わずしてハウリングが起きず、すんなりとライヴに集中できるイクイップメントはそれだけでかなりありがたかったりするものだ。

7)抜群のコストパフォーマンス
僕はこれまでにフィッシュマンや L.R. Baggs などのアコースティック楽器用ピックアップを色々と試して来た。用途としては、必ずしもウクレレばかりではなく、むしろアコギのほうが多かったのであるが、費用対効果を考えた場合、MSPは圧倒的に強い。文句なくナンバー1である。
次点、ナンバー2に付けるのは L.R. Baggs の M-80 あたりであろうか。
MSPを製造する 123music.jp は、決して巨大なるメーカーではないが、MSP以外にも様々にユニークな製品をマーケットに送り出している。

特に何らかの難がある製品ではないが、一点、あえてリクエストするとすれば、MSP専用に設計されたプリアンプが欲しいところ。僕にとっては、GigPro や Para Acoustic D.I. が優秀な分、特に要らないような気もするが、一方において、専用設計のプリならば、MSPの持つポテンシャルがさらに引き出せ、良い仕事をしてくれるのではないかと考える次第。

とまれ、このMSP、音質や使い勝手の良さ、外部機器との相性、ハウリングの心配無用、抜群のコスパなどの点からして、当面は僕のライヴにおける欠かせない相棒として非常に重要な役割を果たしてくれそうな予感がするのであった。

【使用例、その1】

ウクレレ
Koaloha KCM-02

www.youtube.com

【使用例、その2】
アコースティックギター
Martin D-18S (1973)

www.youtube.com

 

【使用例、その3】

※ホールでのライヴに使用

ウクレレ

Koaloha KCM-02

www.youtube.com

 

【メーカーサイト】

www.123music.jp