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小室等さん、ライブレポート  (3/10/2018)

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小室等さんライブ】

2018年3月10日土曜。
場所は国分寺にあるライブハウス、エル・フガドール。
小室等さんのライブである。


小室さんといえば、1960年代から活躍している、言うまでもなく日本におけるフォーク音楽の草分け的存在である。
PPMフォロワーズ、六文銭フォーライフレコードなど、今さら僕がどうのと“解説”する必要はなかろう。

今回のライブでは、小室さんが昨年リリースしたアルバム『プロテストソング2』からの楽曲を第一部で。
プロテストソングと銘打ちながらも、決して過激であったり強烈過ぎないところは、いかにもジェントルな小室さんらしいというべきか。

第二部からアンコールにかけては、最新作からのマテリアルに加え、往年の珠玉の名曲「雨が空から降れば」、「誰かが風の中で」、「無題」などをときにパワフルに、ときにしっとりと。
「音楽夜話」を彷彿とさせる軽妙なトークを織り交ぜながら、そして時折り赤ワインを口に運びながらの、実に和気あいあいとしたライブであった。

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途中、いかにも小室さんらしい出来事が。

ライブハウス、エル・フガドールの近くには西武多摩湖線が走っている。
ライブの最中、ちょうど小室さんが喋っていたときのことである。
「木を植える」という、谷川俊太郎氏の詩を擁した曲を歌う前のことだった。

遠くから、電車の走るガタンゴトンという音が聞こえた。
すると小室さん「今、電車の音が聞こえてるじゃないですか? あれってイイですよねえ、すごくねえ……」
少し間を置いてから「ああいう音が聞こえるところで歌を歌うのってすごくいいなあ……」
しみじみと味わうようにおっしゃり、ギターを弾き始めたのだった。

ん~……。
さすがである。

小室さんの感受性の鋭さというか。
或いはアーティストとしての矜持というか。
良くはわからないけれども、何かそのようなものを感じた。

僕にはかような感性はない。
遠くから聞こえて来る電車の音を耳にしたところで何も思わない。
そもそも衆人環視のライブの真っ最中に電車の音に気付くなどということは皆無であろう。

やはりタダ者ではなかった。
小室等という人は鋭い感受性を持った粋人、アーティストなのであった。


そういえば。
70年代に設立され小室さんも属していた会社、ユイ音楽工房。
その名前の元となったのは小室さんの愛娘であり、現在はシンガーソングライターとして活躍していらっしゃるこむろゆいさんだったそう。
フガドールでのライブの間、そのゆいさんがきめ細やかに、しかしテキパキと小室さんをサポートしていた姿が実に印象的であった。

 

ときに、このライブが行われた国分寺のエル・フガドールでは、ちょうど2年前、2016年の3月、四角佳子さんのライブがあった。
もちろん僕も観戦させていただいたわけだけれども、四角さんといえば小室さんが発掘した逸材であり六文銭のシンガーなわけで、いずれ近い将来ぜひとも直近の六文銭こと六文銭 '09 のライブをフガドールで観てみたいとか思ってしまった。
もし実現すれば、小室さん、こむろゆいさん、四角さん、及川恒平さんの揃い踏み、何とも豪華なライブになりそうだ。

 

ステージでの小室さん、お声の方もガッツリで、昔と変わりなく下から上まできれいにしっかり出ておりました。
ギターはストロークアルペジオ共にこれまた往年の小室さんそのままであった。ギタリスト・小室等は健在なのである。

それにしても、「夢弦堂」というラベルの貼られたあのギター、とんでもなく良いサウンドを奏でておりました。

ところで、小室さんがカポを付けるとき、結構ナナメ気味になっており、あれで大丈夫なんだろうか、弦のビビリが出ないのだろうかと余計なお世話ながらちょっと心配になったりもしたのだが、まったく問題なし。小さめのカポだったけれども、かなりの(?)高級品と見た。

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ところで、実は高校時代、僕は小室さんのコンサートに行ったことがある。
当時すでに欧米のハードロックに傾倒していた僕は、フォークミュージックなど何も知らない状態で、つまりは何の予備知識もないまま、中学時代からの友人に「小室等っていうフォークシンガーのコンサートに付き合え」と、ほとんど強制的に連れて行かれたのであった。
フォークシンガーのコンサートというフレコミだったので、ギター1本で弾き語りをやる御方なのであろうと思っていたら、あに図らんや、ベースやドラムやキーボードなどエレクトリック系の楽器を持ったバンドをバックにガンガン歌っておられ、帰り道、一体あの音楽のどこがフォークなのだ、ロックと変わりがないではないか、お前はアホかヨノナカ舐めてんのか等さんざん悪態をついていた記憶がある。

今回、小室さんのライブ終了と同時に、僕は物販コーナーに置いてあった本「プロテストソング」を買わせていただいた。
アルバム『プロテストソング2』に収められた楽曲の楽譜、谷川俊太郎氏との対談、また谷川氏の詩などが盛り込まれた、実に贅沢な書籍である。
小室さんからサインをいただくときに、高校時代の話をしたら「あ~、そうなの~」とニコニコ笑っておられた。
氏の人柄がにじみ出るような、実に優しく、誠に柔らかな、それでいてなおダンディな笑顔なのであった。

(注: 写真撮影及び写真のSNS掲載等に関しては、小室等さんご本人、及びエル・フガドールオーナー、レンゾーさんより許可を頂いております)

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